このページの先頭

HARVARD SQUARE REVIEW + hitomedia™







Cautious Optimism(慎重な楽観主義)

今日で何とか授業が終了しました。昨年のように、今年もラストクラスでは色々スピーチがあったのですが、今年のベストは大統領制の授業のPorter教授です。

ちょっと内容に自信はありませんが、私の理解の範囲で記しておきます。

今日は午後からの試験・授業がキャンセルになるほどの雪となりました(マイナス6度くらいです)。しかし、薄暗いケンブリッジの冬に似つかわしくない熱い教室が一つ。その名もHarvard Hall(1776年)です。

私がこの授業が好きな理由の一つは「ハーバードの学部生」と一緒に「ハーバードヤード」で授業を受けられる、というミーハーな点にあります。僕からするとハーバードの「学部生」とか「博士課程の学生(分野を問わず)」というのはHarvardという同じ名称を使うのが申し訳なくなってしまうくらいすごい人たちなのです。

ということで徹夜でようよう書き上げた書評を持って教室へ。

Porter教授は大統領制について主要な学説をいつもどおり理路整然と紹介した後、「どれも一長一短だなあ」と述べて自説を改めてまとめます。

そして時間を見計らっていよいよ最後の結びに入っていきます(英語力の問題で一部意訳されている可能性があるのと、どうしても臨場感が伝わらない点はご容赦ください)。

多分、君らは私が自分のことを楽観主義者と規定しても驚きはしないだろう。誤解のないように言っておくが、私もこの世界には色々な問題があることくらい分かっている。そうだな、私の立場は"cautious optimism(慎重な楽観主義)"とでも呼ぶのが適切だろう。

私が世界に対して希望を持ち続けている理由は、今から述べる3つのエピソードから分かると思う。

長さと英語力の関係で全部は紹介できないので、一番感動した一つについて書きます。余談ですが、教授はいつも「○○の理由は3つある。いつものとおりだ。もし4つ目の理由を言ってしまったら指摘してくれ、一つ削除するから。君らが一回のクラスで3つしか記憶できないことはよく分かっている」と茶目っ気たっぷりに述べるのです。

1991年の夏、私はブッシュ(父)と環境関係の法律(Clean Air Act)改正に関連した視察の一環でグランドキャニオンを訪れた。そこで、大統領を中心にしたグループ、上院下院議員や政府役人を中心としたグループ、それに記者達を中心にしたグループの3グループで頂上を目指してハイキングをすることになった。

出発前、ふもとで各々水を持っていくかどうか選べたのだが、私は重いのも嫌なので水を持っていかなかった。大統領は自分で水を持っていったようだった。暑かったので私は自分が水を持っていかなかったのを後悔していた。私は大統領より先を行っていて、少し木陰で休んでいた。

その後、少し離れたところで大統領の一団がやはり休息を取っているのがみえた。大統領が水(筒?)をあけたので、私は喉が渇いたななどと思いながらそれをぼんやりと眺めていた。

すると、大統領は何のためらいもなく、横にいた女性のpark ranger(公園保護に携わる公務員)にまず水を差し出したのだ。

私はこの光景から、人生で一番大切な教訓を学ぶことができた。

人はいつでも選択ができる。


"think about yourself first"か、
"think about others first"の何れかだ。


私は君らの中の誰かが大統領になると信じているし、少なくとも何人かは間違いなく将来Oval Office(大統領執務室)で働くことになるだろう。

でも常に忘れてはいけないことがある。肩書きや地位の面で君らがどれだけ偉くなっても、君たちにはいつも二つの選択肢があるということだ。君ら自身のことを真っ先に考えるのか、他人のことを第一に考えるのか、だ。どれだけ偉くなっても後者の選択肢を選ぶ人たちがいる限り、私はこの世界に希望を持ち続けるだろう。

とても単純なストーリーですが、教授のように社会的名声も得て、すでにかなりの歳になろうというのに、今なお底抜けの明るさを失わないメッセージに、教授が退場するまで長い間惜しみない拍手が送られました。

教授から感じられるポジティブなエネルギーというのは、この愚直ともいえる楽観主義からきていたことがわかり心から納得しました。私の場合は根拠無き楽観主義(=ただのバカ)なのですが、Porter教授の"cautious optimism"を聞いていて自分も将来あんな教育者になりたいとしみじみと感じました。

ハーバードの学部・博士課程があるハーバードヤードからは、文字通り世界のリーダーが輩出されてきました。彼らが現代の歴史を作ったといっても過言ではない部分もあるでしょう。この教室にいる政治学専攻の若者達(10代の学生もちらほら)は、本当にアメリカそして世界の将来を支えていこうという人たちなのだと思います。彼らに対してPorterは「君らは大統領になれ。少なくとも大統領府でアメリカ・世界を良いところにしてくれたまえ。しかしどれだけ偉くなっても他人のことを忘れちゃダメだ。それがこのクラスで教えたかったことなんだ」と語るのです。私は大きなため息を漏らさざるを得ませんでした。

教育者構想は老後の楽しみに取っていたのですが、こういう教育者に出会うと私も早くあんな存在になりたいと思うこともしばしばです(100年かかっても無理そうですが・・)。

その後、雪を掻き分け、来学期から別のビジネススクールに行ってしまう中国人とこれまた熱い昼飯を食べてきました(そういえば13日は南京事件70周年でした)。

ケンブリッジは本当に寒いですが、とても暑苦しい気持ちになった一日でした。

はてなブックマーク Yahoo!ブックマーク del.icio.usブックマーク Livedoorクリップ Buzzurlブックマーク Bloglines Choixブックマーク

コメントの投稿

コメント投稿フォーム

トラックバック

この記事に対するトラックバックURL:
http://mt.hsr.hitomedia.jp/mt-tb.cgi/231

プロフィール

山崎 貴弘
山崎貴弘(やまさき たかひろ)
MPI(Management Policy Institute)フェロー。2002年京都大学法学部卒業。現在、ハーバード大学Kennedy School of Government、MPP(Master in Public Policy)プログラム在籍中。Ezra Vogel教授の元で開催されるハーバード松下村塾幹事(2007年度)。
MPI:http://www.mpi-net.org/

ハーバードブロガー


月別アーカイブ


カテゴリー


外部ブロガー

RSS